千回の春雨スープ

「何で私が怒ってるかわかる?」 背後から聞こえてきた会話に、スタンドで注文した春雨スープを受け取る手が止まる。背後を通りすぎていく二人のあいだに流れる雲ゆきが芳しくないことくらい、振り返らなくてもわかった。身に覚えのある...

砂糖工場の昼休み

 子供の手を引いて、野球場を歩いていた。 アメリカにいるのだということは、なぜか理解していた。夢では良くあることだ。 整備されたグラウンドに選手たちの姿はなく、観客席も無人だ。 軍に接収されてしまった故郷のものとはレベル...