クリスマス 2018

1.黒い金曜日

  付き合って初めてのクリスマス、レンが俺にくれたのはXファイルのTシャツだった。しかも、彼オリジナルデザイン。
 翌年は、ベイダー卿マグカップ。「俺、プレゼント選び下手で」と縮こまる彼は、可愛かった。
 俺は欲しい物をはっきり伝えるようにした。ネクタイ欲しい、あの店行きたい、オペラも良いな。
 そして彼がくれたのは、チューバッカ変身パジャマ、木彫りの仏、猫型(柄ではない)の財布。
 今年、直球で告げた。某所の新作香水をくれ、と。
 黒い金曜日(ブラック・フライデー)初日、彼は俺から隠れるようにネットで何かを注文している。ちらりと見えた画面には……
『宇理炎ソフビ人形 (*) ~ゲームに登場する新興宗教のご本尊、完全再現!』

(*)後述の参考画像参照

2.クリスマス・イヴ

「あ゛ーーー!!」
「駄目だったか……」
「物量おかしいだろ! 勝てるか!」
「最後とか描画やばかったね……蟻の無限湧きがなあ」
「俺もうカエル星人がキッツくて……なんか汁出すし……」
「やっぱ装備考え直そ。応援使えなすぎだよ」
「いや、もう二人ってのがそもそも無理ある気がしてきたわ」
「それは、ある」
「……あ。ミタカでも呼ぶ?」
「ダメでしょ! ミタカさんご実家で家族水入らずでしょ! クリスマス・イヴに『地球防衛軍やりませんか』とか一番言っちゃダメな人でしょ!」
「ええー」
「ええーじゃないよ、常識」
「とか言いながらレン君、ただのヤキモチなんじゃねえの?」
「うっそれは……じゃ、じゃあさ、レイは?」
「は? 嫌だし」
「なんで」
「つかいつの間にフレンドなってんだお前ら。俺ID知らんぞ」
「そりゃそうでしょ。待って、教えていいか訊いて――あれ? 何ぶーたれてんの?」
「別に、ケーキ食ってるだけだもん」
「あっ駄目だって! こら! ちょ、ほん、フォーク……ッ」
「ん゛ん゛っ! 食うの! やだ! ン゛ーーーーーーーー」
「もう二個……ッ! 食べたでしょ、おじーちゃん、ってば!」
「放……せ……! ふんぬーーーーーーー!」
「ああっ!」
「どうだ! 俺とケーキを引き離すことなどできんぞ!」
「嘘だろ、俺が力負けした……信じらんない……」
「ハハハハハ、ケーキ美味い!」
「もー。それ明日のぶんと思って焼いたのに。知らないよ、気持ち悪くなっても」
「俺が買ってきたのはクリーム系、お前が焼いたのは焼き菓子、そもそもぜんぜん違う種族だろが」
「種族」
「よって気持ち悪くなることなどあり得ない。――わかったら珈琲」
「へいへい」
「濃いめで」
「黙れ……!」

「ねえアーミ、今年のサンタさんは何くれるかなあ」
「――言っていいのか?」
「駄目に決まってんだろ!」
「めんどくさ……」
「なんだかんだで毎年楽しみなんだよねえ、このワクワク感」
「サンタさん、要らんもんくれたらどうしような……」
「えっ急に何。――い、要らんもんて? 例えば?」
「……土偶とか?」
「えっ」
「ん?」
「待って、アーミ、もしかして土偶嫌い?」
「……なあ、『土偶嫌い?』ってどういう質問?」
「いや、だって、えっ、ねえ嫌いなの? 土偶的なもの、要らない? 不要?」
「意味わかんねえし……つか俺シャワー入る」
「待っ、アーミってばちょっと、土ぐ……お、俺も入るうう」
「うわあ!」
「土偶ううううううう嫌いなのおおおおおお」
「イヤアアアア何この子怖い! 出てって!」

3.参考画像

宇理炎ソフビ
宇理炎ソフビ人形