Insult me, General! More! More!

このマイクに向かって話せば良いんだな?
ああ、こんな下らない仕事、さっさと終わらせよう。待て、タイトルコールも私が言うのか?……わかった。仕方ないな。……オイ、わかったと言っているだろう!怒ってなどいない!貴様、黙らないと降格するぞ。ADごときが図に乗るな。
……ああ、んー。あー、あー。
始めたまえ。

《ジングル》

ファースト・オーダー兵士の諸君、おはよう。『将軍、罵って!』のコーナーだ。
毎回のことだが、この悪趣味なコーナーに大量のメッセージ、およびアナログのハガキが寄せられることが不思議でならない。
まあ、ここで「貴様らは暇なのか!」などと文句を言ったところで、喜ばせるだけのような気もするから、さっさと片付けてしまおうか。

ではまず一通目。HN“帝国万歳”君からのメッセージだ。
「将軍、いつも素敵な罵り言葉をありがとうございます。いま私はヤビン4近辺の」
おっと、ここは個人情報だ、伏せよう。まあ、戦場にいるというわけだな。続けよう。
「どんなに厳しい状況でも、このコーナーの将軍を思い出すと、魂が浄化されるような心持ちになります。帝国復活のため、そして何より貴方のため、粉骨砕身で明日も戦い続ける勇気が出ます。ありがとうございます。ファースト・オーダー万歳!もっと罵ってください!」
……このコーナー安定の変態ぶり、といったところだな……。だが、なかなかに泣かせる手紙でもある。まあ、私の罵声ごときで救われる魂、救う価値があるのか?という気もするな……。うん。
『そのまま地獄に落ちろ。私は一向にかまわん』
これでいかがかな?ま、せいぜい滋養にしたまえ、変態くん。次。

HN“MTK48”君。
「仕事でミスをしてしまって落ち込んでいます。今後二度と同じミスをしないよう、手酷く叱って下さい」
……ハァ(溜息)。こういう曖昧な依頼がいちばん困る。きみはどういう仕事をしていて、どういう状況でミスを犯したのか。責任の所在が曖昧な状態で叱りつけるほど、私は暴君ではないぞ。──もっとも、欲望丸出しでこんな大味な要求する輩のことだ、十中八九、責任はきみにあるのだろうがな。だがな、良く覚えておけ。そういう人間を、私は叱ったりはしない。
『きみ、もういい。行きたまえ』
これで充分だろう。無能に関わるなど時間のムダだ。二度と顔を見せるな。次。

HN“へっぽこぱいろっと”君。
「いつもラジオ聞いてます。先日、某所上空付近で偵察飛行中のレジスタンス小隊とかち合い、撃ち合いになりました。俺一人で絶体絶命かと思いましたが、死ぬ気でほぼ全機撃墜してやりました!が、一機だけ逃げられたことが悔しくてなりません。そいつは飛行技術を見せびらかすように飛びまくるパイロットで、サーカスかよ!と腹が立ちましたが、なにより不甲斐ない俺にお叱りのお言葉を賜りたく、筆を執りました。それから、あの野郎、今度あったらタダじゃおきません!必ずぶっ殺してやります。そのときに言ったらかっこいい台詞も考えていただけたらもっと嬉しいです」
以上だ。なるほどな……。きみは私に叱られたいというが、まずはよくやったと言わせてくれ。たった一人で敵の小隊をほぼ壊滅させるなど、なかなかできることではない。勇気を出してよく頑張ってくれた。訓練の賜物だ。そんな君を叱るのは、正直気が進まないのだが──そうだな。
『命を省みずに突撃するなど、愚かなことを。きみの命は、帝国の命そのものだ。もう少し丁寧に扱いたまえ』
……これで、どうかな?ああ、それからその、蝿のようなレジスタンスに対してだが。こんなのはどうだろう。
『ほう、調子に乗って殺されに来たか。いいマトだな、貴様』
そしてトドメを刺すときに、こうだ。
『野良犬が、死ね』
次は、確実に仕留めたまえよ。武運を祈る。

お次はHN“カセスレミン”君からだ。
『友人が科学部門にいます。いいやつなのですが、兵器に対する情熱の傾け方がちょっとどうかしています。この間もソルディオスキャノンを自律飛行させられそうだからやってみたい、などと笑顔でのたまっていました。あんなものを浮かべて喜ぶなんて、どうかしています。思いとどまるよう一言』
──おい、ちょっと待て!それは、自律したソルディオス砲を分離飛行させることが可能、ということか?……なんてことだ!その科学者をすぐここへ連れて……というか、貴様、“浮かべて喜ぶなんてどうかしてる”?どうかしてるだと?喧嘩を売っているのか?!浮かべられたから浮かべた、それの何が悪い!そもそも科学というものは、不可能であることを可能にす──あ、ああ、すまない。私としたことが。興奮してしまった。いったん落ち着こう。
ええと、“カセスレミン”君、だったか。きみの所属はしっかり確認させてもらったよ。きみには科学の素晴らしさをたっぷりご堪能頂く必要がありそうだ。追って下される処分、楽しみにしていたまえ。
次に行こう。

HN“虫”くん。……すごい名前だな。ええと?
「ぼくは虫けらみたいに価値がありません。ダメ人間です。そのことをはっきり自覚できるよう、思いっきり罵倒してもらえませんか」
……虫のくせにハガキを送ってくるんじゃない。次。

《ガタン!という大きな音》

おい、なんだ今の音は!

(すみません!おい、一回収録止めろ!)
(マット!さっきから何やってんだお前!)
(あーあー、床びしゃびしゃじゃねえか。なんでただ立ってるだけのお前が水こぼすんだよ、ったく。何に動揺した?)

マット?知らん名だな。どいつだ?……あの眼鏡の金髪か……。
…………。
おい、きみ。マットくん。ちょっと、こっちに来たまえ。──顔を良く見せてくれないか?

《静まりかえるスタジオ》

ハハ、なにも叱責しようというんじゃない、心配するな。ただ、新人のようだから顔をきっちり覚えておきたいだけだ。大丈夫だから、おいで。
……どうした。何を俯いている?君のことだぞ、ADのマットくん・・・・・・・・

(おい、マット、馬鹿野郎!将軍がお呼びだぞ!)
(もたもたすん──あ、お前、どこ行く気だ!)
(待て!コラ!!)

《複数人が全力疾走する足音》
《バタンと扉が閉まる音》

(も、申し訳ありません、将軍!あの馬鹿……)

……逃げたのか?ハハ、妙なヤツだな。なんだか見覚えがある気がしたんだが、まあいい。私の勘違いだろう。悪いことをした。あまり叱ってやるなよ。
さあ、収録に戻ろう。

(え?でも今回分のハガキは以上ですよ。締めの台詞はいつもと同じものを流用しますから、これで上がって頂けますが……)

じつは、個人的に預かってきたハガキが一枚あったのを思い出したものでね。時間が許すなら、今回読んでしまいのだが。

(そう、ですか。……了解であります。おい、どうだ?)
(大丈夫です、行けます)
(収録再開しまーす!)
(3,2,1,どうぞ)

さて、今日はこれが最後のハガキだ。HN“M”くん。
「恋人のことが好きで好きで仕方ありません。何をしているか気になって、とうとうこの間は職場にまで侵入してしまいました。バレてはいないと思うのですが、さすがに自分が気持ち悪いです。この悪癖を断てるよう、ぼくを諫めてもらえませんか?」
Mくんに、ひとつ忠告だ。きみはバレていないと思っているようだが、案外相手はきみのことを見透かしているものだ。だから──そうだな。きみの恋人に代わって、私がこう言おう。

『貴様には、山ほど説教がある。今夜、楽しみに待っていろ』

今回はここまでだ。
それではまた、次回。……ま、次回などないことを祈っているがな。
ファースト・オーダーに栄光あれ。

《ジングル》

(おしまい)



…とうふさんのツイートから頂いたネタでした。
いつもありがとうございます…


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