怖いミタカ君の話。

「将軍、ところでカイロ・レンに性教育したんですよね?」
「なんか卑猥な響きだなその言い方、い、痛い!すみません!しました!」
「どのように?」
「上司を折檻しといて平然とした顔で会話続けるな、お前」
「痛み入ります」
「褒めてな……ああっすみませんビデオ!ビデオを渡しました!」
「……ビデオ?」
「トルーパーの幼稚舎で昔使ってた性教育用のビデオ(ちなみに借りてくるの相当恥ずかしかった)」
「ああ、あれ……。あれ確か“無駄にエロい”って言われて今のに差し替えになったんじゃなかったでしたっけ?」
「え、そうなのか?!道理で……なんか途中からレンが妙な感じになってたの、そういうことか……」
「いきなり最悪の手段取ったんですね、ていうか、え、ちょっと待ってください。一緒に見たんですか?」
「仕方ないだろ。レンの奴、一人にすると泣くんだもん……」
「そこは突き放せば良いのでは……。それにあれ、男女用しかなくなかったですか?同性同士のことはどうやって教えたんです?」
「お前、踏み込んでくるな……。いや普通に言葉で言ったよ。で、さらに泣かれた。そんなの危ないって」
「ウワー(棒読み)ちなみに危ないって、何が?」
「“本来の用途じゃないのに、そんなところ突っ込まれたら痛いだろ、ハックスかわいそう”って」
「へえ。意外と思いやり深いんですね、カイロ・レン。ちょっと見直し──」
「だから殴った。グーで」
「なんで?!」
「“痛い思いをする役割は貴様だ馬鹿者”っつって」
「……そういうところで無駄に権力のマウント取るの、どうかと思います。ていうか、お互い行為におよぶことに関してはOKなんですねハハハ」
「死んだ魚の目をするな!そんなわけあるか!そもそも付き合ってないんだ。付き合う気もないし、私とレンはそういうんじゃな──」
「……」
「“何言ってんのコイツ”みたいな顔やめろ!上司だぞ私は!そういうんじゃない!そういうんじゃないの!!違うの!!!!」
「あーはいはい、わかりました、わかりました。で、それ、ちゃんと彼には伝えたんですか?誤解生んでません?」
「そこ、なんだよな……。レン、最初はグズグズ言ってたけど最終的に“わかった”とか殊勝な顔して頷いてたんだけどさ、最後の言葉が“まずは友達からだよな”だって」
「わかってないですね」
「やっぱり?」
「変な希望持たせましたね貴方。告白されてあからさまに嬉しそうな顔しながらエロビデオ一緒に見て“私たちそういうんじゃないの”って、タチの悪いメンヘラみたいなことしましたね」
「すごいこと言われてる」
「傷ついた顔してみせてもダメですよ事実なんですから」
「……ハイ……」
「よろしい。──で、それから?」
「それから……なんか俺も疲れてたから、“それでいいわ”って言っちゃったんだよな……。あれ以上一緒にいるとまた襲われかねなかったし」
「ああ……」
「あ、でも、ちゃんと最後に“変なAVとかネットで漁るなよ”って釘刺しておいた」
「それ確実に見てますね今頃。寝た子起こしましたね貴方」
「えっ」
「あんたねえ、本当にそういうとこ!」
「いやでもレンは別に私をそういう目では──」
「何言ってんの?!バリバリ見てたでしょうが?!そもそも将軍、貴方だってカイロ・レンのことそういう目で見たことあるでしょう?!」
「ない」
「そうでしょう、だったら──え?」
「ない」
「え」
「一度もない」
「……性欲は?」
「ハッ?!」
「いや将軍にだってあるでしょう、性欲」
「ありません」
「精通まだですかもしかして」
「セクハラか?!上司にセクハラだな?!エロ同人の展開だな?!」
「まだなんですね」
「少しは乗れよ!なわけないだろ、34歳だぞ私は」
「じゃあ射精は可能なわけですね?いつですか」
「はい?」
「性的な興奮を覚えて射精したのは、直近はいつですか」
「……ミタカ君さ、これ何のプレイ……?」
「いいから答える!」
「ヒッ!れ、レジスタンスに協力してた村、丸々ひとつ焼いたとき、です!」
「…………ぅゎ」
「ええええ!訊いておいてその反応ひどくない?!」
「……」
「だ、だって仕方ないだろ、ただ焼き殺しただけじゃなくて、ついでに最新バーナー、通称トースターターボ3の性能テストもやったから……そりゃあ景気よく燃えて……たくさんの人間がめっちゃ燃えながら絶叫して走り回ってて……さすがに我慢できなくて……その、ちょっと……」
「…………」
「……ミタカ?」
「…………」
「ミタカ……な、なんか言ってくれ……」
「失礼。ちょっと頭痛が。それと実家に帰りたくなってました」
「失礼すぎるぞ貴様。言わせたのお前のくせに」
「いやもう、面倒だから断言しますけど、おそらく今後はその変態性欲はカイロ・レンに向かいますよ多分。貴方カイロ・レン好きでしょう?カイロ・レンも500パー貴方好きですよ。もうね、ヤるかヤられるか。そこまで来てんですよ!わかってんですか、あんたら!」
「……ミタカさあ、お前そんなキャラだっけ……?」
「シャラップ!!で、どうなんです?!どうするつもりなんです?!ええ?!オアア?!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……し、失礼しました。なんか、すごい腹立って…………もう大丈夫です………」
「……う、うん。なんか、ごめんな……。あのな、ミタカ」
「はい」
「私にも、一応ファンがいるのは知ってるな」
「……。あ。ええ」
「なんでちょっと黙ったの?」
「いや、その……なんていうか……ファン層を思い出して……だいぶアレなファンが多かったなと……」
「そう。アレなんだよ。ぶっちゃけ大概が──処女厨」
「キッツ」
「そういうリアルな反応やめて傷つく」
「失礼、つい」
「だから将軍が貫通済みとかな、そういうのマズいんだわ。広報的にも」
「成る程。職務に支障をきたすから、ヤられる訳にはいかない、と」
「うん。そう」
「くっだらねえ」
「ミタカ?!お前、本当にミタカか?!?!」
「まあ、とにかく、貴方少しは自覚持った方がいいです色々と。どっちにしろどっちかのバージンは失うんですから、カマトトぶってないでさっさと覚悟決めた方が建設的っていうか、私の面倒が少なくて済みます」
「うん……面倒、な……はっきり言ったな……」
「イイ歳なんですから、“きゃー好きな人とエッチするの恥ずかしー”とか、そういうテンションはイタいのわかりますね?“初めてってバレたらカッコ悪い”とかも無駄な足掻きですからね、どうせどっちも初めてなんですから。さっさと恥かいて幸せになってください」
「み、ミタカ……優しいの……?ひどいの……?」
「あのねえ。私だってギクシャクするあなた方を見たくはないんです。だったら、さっさと自分の気持ちに素直になることです。宜しいか!?」
「は、ハイっ!」
「ん。良いお返事です。さすが将軍」
「……な、なあ、ミタカ」
「なんです」
「れ、練習……」
「は?」
「あの、どっちでもいいから、練習の相手……」
「お断りだ!アホか!人の話聞いてたんですか?!やっぱ股のゆるいメンヘラだなアンタ?!」