寝室四景

……ミタカ?
ごめんなさい。起こしてしまいましたね。
いいんだ──帰るのか。
ええ。もう行かないと。ああ、そのままで
そこまで、送る。
……すみません。
謝るな。
……では、失礼しま──
明日は、お前の剥いたオレンジが食べたい。
──え? あ、ああ。わかりました。用意しておきます。
おやすみ。
おやすみなさい。温かくしてくださいね。……風邪を、引かないで。

ちょっと待て……! なんで別なんだ?!
別?って、何がでしょう?
寝室だよ、し・ん・し・つ! ベッドルーム! 愛の巣!
え。だって
だってじゃない! 私たちはいわば新婚さんだぞ?ベッドが別々なんてあり得ないだろうが!
そんな。僕ごときが貴方となんて──
アーミテイジ。
はい?
私は「アーミテイジ」だ! もはやお前の上官でも、ましてやファーストオー
あーーーっ! うわーーーーーッ!!
……ど、どうした。嬉しすぎて発狂したか?
シーーーッ! いつどこで聞かれてるか判らないんですよ、軽々しく“その名”を──
言ってほしくないならベッドは一緒にしろ! 上官命令だ、やり直し!
無茶苦茶ですよ、貴方……。
アーミテイジです!
あーはいはい、無茶苦茶ですよ、アーミテイジ!
良し! ──あ、それと寝具は私が選んでおいたやつがあるから、それ使え。
……ぜんっぜん聞いてないんだから……。

ふふ。フェール。
……なんですか、気持ちの悪い。
ふふふふふふ。フェルだ。
そうですよ。──もう、大変だったんですからね、部屋割変えるの。
ありがとうな。
どういたしまして。──でも、素敵ですね、この寝具一式。どうしたんです?
んー、なんていうか……火事場ドロボウ?
……?ま、まさか、貴方、脱出の時に……?
あー、あー、聞こえなーい。
し、信じられない! あの火急のときに……ってうわッ! 何す──
勘の良いおしゃべり野郎はこうだ! んむー!
……ッ!
……っは! お、お前、途中から積極的になるのは、は、反則だぞ……!
そっちが仕掛けてきたんでしょう。大体、一緒に寝るのに、最初からそのつもりだったでしょう、アーミテイジ。
わーお。間近で聞くと照れるな。
フッ。
あ、笑った! ……あっ……ちょ、待っ……待……たなくていい……。
フフッ、なんですか、ソレ。
うるさい! ……は、早く……来い……。

フェル。
…………。
フェルー。
…………。
フェールー。
…………んん……。
こら、フェルってば。起きろって。
…………んー……。
お前、意外と寝起き悪かったんだな。
…………んん、起き……て……ます……。
うそつけ。ちゃんと起きろ、ねぼすけ。
…………ぁぃ。
お、目が開いた。オハヨ。
…………ぅぇぃ。
おおっと。こりゃ起きてないな。
……アー……みてい……ジ……?
そうだぞー。お前の銀河一ハンサムなハニーだぞー。おーい──
……かわぃぃ……
聞こえてるか、って、オオ?! え?!
…………。
え?! 今なんつった?!
…………。
……フェル?
…………。
ドフェルドくん……?
…………ぐう。
ね、寝てる……?
ぐー。ぐー。
……し、心臓止まったかと思った……。