[phelmitage] Mergo 現実 <1>

現実 <1>  視線が痛い、気がする。 のは、気のせいだろうか。 朝一でおこなわれる定例会議の末席で、ミタカはじりじりしていた。正面のスクリーンに投影された議題に顔を向けてはいたが、意識はまったく別のところに...

[phelmitage] Mergo 断章 <1>

断章 <1>・時計塔  いかにも田舎の小さなホテルには、狭いロビーと、微妙な味と値段の食堂があった。さほど広くもなく、五組ほども入れば満席になってしまうが、それでもいつもガラガラに空いていた。時折、町の名士ら...

[phelmitage] Mergo <2>

第二夜・夜の博物館  濃紺の夜空に貼付いた青白い月が、てらりと黒く鏡面めいた湖に影を落とす。 宙に散らばるまばらな星々の光は弱いが、黒々と聳える針葉樹たちの根元には、ほの白く光る花の大群が咲いていた。出所不明の光源を探し...

[phelmitage] Mergo <1>

第一夜・冬の浜辺  冬の浜辺を歩いていた。 誰もいない。 私は、砂を踏みしめる、歩く。さく、という小気味よい音が、足下で鳴る。 砂浜はゆるく湾曲しながら、はるか先まで続いているようだった。浜の右手に目を遣れば、なだらかな...

Mergo 扉

Mergo ~メルゴ~ ハックス将軍とミタカ中尉の、ぼんやりした連作。連載中。(→ 連作「Mergo」について) 第一夜・冬の浜辺第二夜・夜の博物館 断章 <1> 現実 <1> …to be co...

[phelmitage] はたらくふたり

はたらくふたり  社交と政治は切り離せない。と、偉い人は言う。  だけど、それが好きかどうかは別の問題だ。と、ミタカは思う。  たかだか中尉の僕に、きらきらしいカクテル・パーティーでなんの政治をやれと言うのだ。実際、いま...

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[phelmitage] 終幕/開幕

終幕/開幕 闇。 奈辺に広がる深淵。透明な孤独。 気が遠くなるほどの漂流を始めて、どれほど経ったか。 星が生まれ、死に、生まれ、死に、百度たり繰り返しても足りぬほどの茫漠たる時を揺蕩い、それでも彼は探しつづけていた。 何...